尾崎 実哉 展 
JITSUYA OZAKI
『カタリ伝ってアル』

古代の記憶を木による立体造形作品で語る
「大阪会場」 2008.12/22(mon)〜12/26(fri)[12時〜7時] & 12/27(sat)[12時〜4時半]
「兵庫会場」 2009.1/17(thr)〜1/25(sun)[10時〜6時] & 1/27(tue)[10時〜5時]
月曜日休廊 入館無料


こをろこをろと搾り出て
こをろこをろと飲み干して
こをろこをろと玉の音

この木の玉は、大きな風が吹かないと揺れない、
手で押さないと鳴らない。
でも、この空間では鳴ってくれそうである。
心の真で、こをろこをろと。 その音、お酒が搾り出され生まれる音。

それを、飲み干し身に入る音。 その時、こをろこをろと玉の音。

*「こをろこをろと」 古事記に登場する「天の沼矛」という神聖な矛で、海水をかき鳴らした時に鳴る音であり、
それによりイザナミ・イザナミの男女二神が大八島(日本国)を、
生む為に降り立つ島、オノゴロ島が生まれた。


[所在地]
〒664-0895 兵庫県伊丹市宮ノ前2丁目5番28号
「みやのまえ文化の郷」 伊丹市立伊丹郷町館・旧岡田家酒蔵
[問い合わせ]
ドット アート コスモ 右脳の散歩道ギャラリー(C)
Tel. 090-3487-2601
伊丹市立伊丹郷町館
Tel.072-772-5959
[後援]
財団法人 伊丹市文化振興財団伊丹市立伊丹郷町館
[協賛]
ドット アート コスモ 右脳の散歩道ギャラリー(C)
[交通]
●阪急伊丹駅より徒歩北東へ9分
●JR伊丹駅より徒歩北西へ6分
●伊丹市バス・阪急バス伊丹本町停留所より徒歩北へ3分
尾崎実哉展『カタリ伝ってアル』に寄せて
坂上 義太郎(前伊丹市立美術館館長)

20世紀初頭のヨーロッパでは、オーギュスト・ロダンが確立したといわれる 近代彫刻を、フォルムの解体によって超克したところから 現代の彫刻が始まったとされている。と、ともに科学の発達、 都市の変貌などや芸術の分野にも激しい変遷がみられた。 取り分け第一次世界大戦前後から起こったダダイズム、 構成主義、シュルリアリズムの 作家たちが縦横無尽に活躍した時代でもあった。 この1920年代から30年代の芸術思潮が、 今日でも形を変えながらの現代造形の原点といっても差し支えないだろう。 さて、"古代の記憶を木による立体造形作品で言葉を語る"を 標榜する尾崎実哉、私は、「松の心は松に聞け」と言った松尾芭蕉の言葉を思い出した。 自然の声に耳を傾け、その心に人間を見詰め、 そこから新しいものを創造するといったことを示唆した言葉である。 愚直な尾崎は、木との対話から、その声を聞いて、 作品制作に真摯な姿勢で取り組んでいる。そして今回、 日本最古の酒蔵で「歴史・アートの新しい開眼と立ち会う空間を提案し、 アートの力を伝えることだ」と作品展示を行う。 ここで出品作品のなかから目に留まった作品について少し触れてみたい。 作品 <こをろこをろ>は、縦の角柱4本を正方形に布置し、上部にボード状 の部材を水平に渡している。その4本の間に大小3個の木の鈴が吊られている。 <こをろこをろ>とは、『古事記』に登場するイザナキ、イザナミの男女二神が、 大八島(日本国)を生むために降り立つ島、オノゴロ島をつくる話の なかで、海水を掻き鳴らす音の表現に使われている「コオロコオロ」を 平仮名にしたとか。角柱4本は、天と地を繋ぎ、上部のボードは雲で、 木の鈴は海水を掻き鳴らす音を造形化したのであろう。 木地の鑿跡の荒々しさに、尾崎が果敢に取組んだ痕跡をみることができる。 変に理屈っぽくなく、全身全霊で表現しようとしている姿勢に好感を抱かせる作品だ。 次に<聖なる太柱>を取り上げてみたい。イザナキ、イザナミが結婚と国生み するために、オノゴロ島に建てた聖なる太柱がある寝殿を作品化したのだそうだ。 作品形状は、木箱のような造形が上下2段あり、 その中央には丸太が屋根部を貫いている。さらに、丸太の左右に木の鈴が 各2個吊り下がっている。一見して、男女の交わりをしての 国生みを造形化したことが見て取れる。木箱の表面は、槍鉋で削られており、 時空間が創出されている。神代を扱った『古事記』に想を練り、 古来からの手道具を使い、時の年輪を存する原木に神代を彫刻する尾崎。 現代視座から神代を造出し、未来を見据えるスケールの表現に挑戦している 葛藤が垣間見れる。尾崎は、作品を現存する日本最古の酒蔵で展示するという。 時の香漂う酒蔵の空間に、神話を造形化した作品を提示し、 私たちに今日の文明社会への反動から「現代」を問い、 人間と歴史の結びつきをも考えさせる機会の創出を企図したのでは ないだろうか。酒蔵の時空間に佇む私たちは、過去から現在、 そして未来へとつづく時間のなかに、 現れては消えてゆく記憶の確かさと儚さをも実感することだろう。 何れにしても、尾崎の『カタリ伝ってアル』が、酒蔵にどの程度の規模、 どのような位置関係を腐心してくれるだろうかと、今から期待が膨らむ。
タイトルとしての、『カタリ伝ってアル』酒蔵での個展
尾崎実哉作品世界は、木との語り・作品内容・作品に向う姿勢等が、尾崎実哉という作品で有り、 それは、伝えていきたい精神性のカタチ(作品)だと思われる。 古代から語り伝わったカタチ&精神性を、『今』生きる彫刻家が、未来に語り繋げる精神性の作品。 また、酒蔵も今なを現存する日本最古の酒蔵・長い歴史を漂い束の間を生きた人々・ 時代を見つめた酒蔵に、古代の記憶をテーマに木材を利用した立体造形作品を置くで、 「歴史・アートの新しい開眼と立ち会う空間を提案し、アートの力を伝える事だと開催する。
履歴
尾崎 実哉 JITSUYA OZAKI  

略歴 1973 和歌山県に生まれる
1998 大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修士課程修了

個展 1996 「ART progress3」 AD&A gallery(大阪)
  1998   信濃橋画廊(大阪)
  1999
  グラステーション・オーバ大阪・ショールーム
(日本板硝子ビル1F)(大阪)
  2000   ドット・アート・コスモ(大阪)
  2003   CASO(大阪)

グル-プ展 1996 第16回日韓交流展出品 (韓国・ソウル)
1999 大阪芸術大学大学院修了展  天王寺Mio Mioホール(大阪)
2000 「FINAL FAIR」 グラステーション・オーバ大阪・ショールーム
(日本板硝子ビル1F)(大阪)
2001 「ウィンドウ」
阪急グランドビル31Fショーウィンドウ(大阪)
「アートの箱船」 INSAgallery(韓国・ソウル)/協賛:大阪芸術大学
2002 「Works of sculpture」
GUILDGALLERY(大阪)
  Korea-Japan Project 《第一回Project“New”》 Sung Bo Gallery(韓国・ソウル)
Gallery ARTINUS(韓国・ソウル)
2003 「個のしごと」 信濃橋画廊(大阪)
  公開制作 Korea-Japan Project《第二回Project“New”》 かつらぎ自然の家(大阪)/協賛:大阪芸術大学
  Korea-Japan Project《第二回Project“New”》 ドット・アート・コスモ(大阪)・
大阪芸術大学内ギャラリー(大阪)
2005 「BEYOND THE BORDER」
茶屋町画廊(大阪)
  公開制作 Korea-Japan Project《第三回Project“New”》 Mr.youユs studio(韓国・慶州)
  Korea-Japan Project《第三回Project“New”》 CUBE space(韓国・ソウル)
  「第二回木の造形展」 近畿中国森林管理局(大阪)
  「亀岡あかりのアートプロジェクト」 南郷公園(京都)・すみや亀峰菴(京都)
2006 「関西空港展」
関西国際空港(大阪)
  「OSAKA WOOD TECHNOLOGY FAIR 2006」 インテックス大阪(大阪)・ギャラリー菊(大阪)
2007 Korea-Japan Project《第四回Project“New”》
大阪芸術大学内ギャラリー(大阪)・CASO(大阪)
  「ART IN KISHI」 喜志商店街(大阪)
  「第三回木の造形展」 近畿中国森林管理局(大阪)
2008

「The 9th Madame Shin Saimdang Grand Art Exhibition
《2008 International Invitational Exhibition》」
Gangneung Art Gallery(韓国・嘉興市)
  Korea-Japan Project《Project“New”2008》 ギャラリーいろはに

Open air
exhibition
1999 「第三回TAKIHATA・ART・WALKING」 (大阪)
2000 神戸ハーバーランド・ガス燈通り「風の街の造形動物園」 (兵庫)
  2002 第9回六甲アイランド「潮風アート」 (兵庫)

Artist in
residence
1998 河内長野市滝畑でのアーティスト・イン・レジデンス
「第二回TAKIHATA・ART・WALKING」
(大阪)
 

Prize 1997 大阪芸術大学卒業制作展 美術学科 学長賞受賞

Collaboration

1995

豊中市アクア文化ホール,大阪芸術大学音楽学科(定期演奏会)
とのコラボレーション−舞台上に設置−
(大阪)

  2004 「摩耶・げいじゅつ山」 神戸摩耶山・掬星台(兵庫)

展覧会風景
ART
作品データは以下の順に記す。作品名/制作年/寸法(cm)/技法/素材

琴座から

1996
W3800×H1700×D400mm
楠、鉄

ほいさっさ 

2002
W3910×H1660×D1090mm  
セランガンバツ、楠、樫、
ブビンガ、鉄
楠、欅、山芝楓、鉄

       

日出ずる

1997
W750×H2170×D530mm  
楠、欅、山芝楓、鉄

Esa-Hoi-Sassa in Seoul 

2002
W2610×H1095×D733mm 
樺、楡、栗、鉄
楠、欅、山芝楓、鉄

       

舟唄の聞こえる

1997
W2900×H3010×D1600mm 
楠、榎、楢、樫、
ウォールナット、鉄

天の浮橋

2005
W3990×H2920×D1600mm
楠、辛夷、ホワイトオーク、
樫、楢、ブビンガ、鉄
楠、欅、山芝楓、鉄

       

ふしくれだちに交わる

1999
W1200×H2120×D680  
楢、硝子、顔料
楠、欅、山芝楓、鉄

さ昇り

2007  
W4715×H3015×D1750mm
杉、桧、梅、ブビンガ、
ウォールナット、鉄
楠、欅、山芝楓、鉄

       

釣師と黒きゴムまり

2001
W1220×H450×D360mm
楠、樺、黒檀、鉄、硝子
楠、欅、山芝楓、鉄

夜見の音の風

2007
W480×H1440×D2000mm
楠、桜、櫟、馬酔木、ブビンガ、鉄